アパート経営を失敗しないための長期戦略の立て方

不動産投資
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銀行融資が緩くなると、高属性のサラリーマンでも手軽にアパート経営を始めることができます。

しかしながら手軽に始められることと、アパート経営を続けることは別物です。

アパート経営を失敗しないためには長期的な視点が必要ですが、その理由と戦略の立て方について考えていきましょう。

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アパート経営で長期戦略がなぜ必要なのか?

購入時の諸費用回収に時間がかかる

アパートの購入時には様々な費用が必要になります。

  • 仲介手数料
  • 登記費用、登録免許税
  • 融資手数料
  • 不動産取得税

その他にも細々とありますが、概ね物件取得価格の10%程度は必要になります。

それと比較してアパートの収入はどのくらいでしょうか?

表面利回りは都市部で6%〜8%、地方で8%〜12%が目線になるでしょう。

サラリーマンの方が購入される場合はフルローンがほとんどですので、現在の調達金利と融資年数でBTCF2%(税引き前年間キャッシュフローは物件価格の2%程度)の物件が購入対象になってくると思います。

そう考えた場合、物件価格の10%にもなる費用を回収するためには、単純に5年以上は必要となります。

アパートの価値を維持、向上させるための費用を捻出

アパートの建物部分は時間とともに価値が劣化していきます。

大きな部分としては屋上防水と外壁の再塗装が必要となる大規模修繕が上げられます。

また入居者の退去に伴い、室内の原状回復も必要となります。

室内の間取りや設備については時代とともにニーズも変化してきますので、数十年に一回はリフォームも必要となるでしょう。

これらの費用をキャッシュフローから捻出する必要があります。

大雑把にこれらの費用を10年間で購入価格の10%と仮定した場合、BTCFが1%低下しますので、純粋な年間キャッシュフローとしては物件価格の1%となります。

売却でキャピタルゲインを得るためには長期視点が必要

アパートの価格は銀行融資の状況によって左右されます。

融資が緩くなると価格が高騰し、融資が厳しくなると価格が下落します。

その周期は景気の波と同様で、数年単位か、長ければ数十年単位となります。

 

売却額の最低目線は銀行融資の残債以上であることがほとんどでしょう。

購入価格と同等の価格で売却できれば大成功と言えます。

しかしながらそうなるためには時間が必要です。

何故ならば、購入時の諸経費を回収するのに5年程度必要ですので、その間に融資の状況も変化し、価格が反転している可能性が高いためです。

ということは最低でも10年程度は保有すると考えて戦略を立てていく必要があります。

運営中の戦略を考える

入退去対策、入居者対策をしっかり

アパートの収益を最大化させるためには満室経営が必要です。

満室経営のためには空室を出さないことが一番で、そのためには現在の入居者に住み続けてもらう施策が必要となります。

入居者からのクレームに対する対応はもちろんのこと、更新時に退去させないような対策も非常に有効です。

昨今は更新料を無料にすることや、室内クリーニング等をサービスしている物件もありますので、競争力を高める上では考慮に入れておきたいですね。

 

また、空室が発生した場合には新しい入居者を見つける必要があります。

そのためには普段から管理会社と良い関係を気づき「このオーナーのためなら頑張ろう」というような営業マンとタッグを組んで進めていきたいですね。

また、管理会社以外の仲介業者とコネクションを作っておくのも有効です。

複数の視点で自分のアパートを見てもらうことができるので、思わぬプランを提案してくれることもあります。

大規模修繕、リフォーム費用は計画的に積み立てる

運が良ければ大規模修繕は避けられますが、いつまでもやらないわけにはいきません。

そのためにも事前に計画を立てておく必要があります。

一般的には10年に一回必要になるもので、費用としては購入価格の5〜10%くらいでしょうか。

ここは実施する内容や規模によって費用感が異なりますので一概には言えませんが、自分のアパートはどのくらい必要となるのかを見積もってもらいましょう。

こちらのサイトから見積もりを一括で依頼できます(全国対応)。

その見積もりを前提に、毎年積み立てる修繕費用を決めましょう。

 

また内装についても費用が発生します。

築古物件で多いのですが、退去が発生して部屋の間取りを見てみると昔の間取り(人気のないDK等)であったり、水回りの改修が必要になることがあります。

そのような場合には一部屋あたりに多額の費用が発生します。

間取りにもよりますが、3DKを2LDKへ変更する場合などは1部屋100万円にもなる場合があります。

そのような場合にも対応できるよう、資金には余裕を持っておきたいですね。

資金繰り、税金対策

キャッシュフローが黒字であれば普段の資金繰りの心配は不要ですが、アパート経営では大規模修繕などで大きな費用が必要になる時があります。

その時にきちんと資金が積み立てられていれば良いのですが、キャッシュが溜まる前に費用が必要になることもあります。

そうなった場合には資金の調達が必要になってきます。

大規模修繕やリフォームで追加の資金が必要となる場合、一般的にはメインバンクにお願いすることになるでしょう。

ローンの返済が順調でキャッシュも溜まりつつあるのであれば追加の融資に応じてくれる可能性が高いですが、そうでない場合は断られる可能性もあります。

またアパートローンとは異なり、リフォームローンで借入を行うと高金利になるケースもあります。

そのような場合には政府系金融機関やクレジット会社へ融資をお願いすることも視野に入れましょう。

 

税金についても考慮する必要があります。

アパート経営での大きな税金は、不動産取得税、固定資産税・都市計画税、所得税です。

不動産取得税は購入時のみ支払うものですが、固定資産税・都市計画税は毎年支払う必要があります。

ただし金額は大きく変動しませんので、資金計画は立てやすいでしょう。

所得税は利益に対して課税されるものです。

アパート経営における利益の考え方はキャッシュフローとは異なります。

大きくは2つあります

  • 融資の元本返済分については経費とは認められない
  • 建物の減価償却費は経費となる

これらが均衡している間はキャッシュフローと利益は大きく異なりませんが、ローンの返済が進むにつれて元本の返済部分が大きくなります。

これに対して減価償却費はだんだん少なくなっていき、最終的には耐用年数を超えるとなくなってしまいます。

こうなると、キャッシュは残らないが利益だけが出ているという「デッドクロス」の状態になります。

デッドクロスが発生しても所得税が支払える余裕があればいいのですが、そうなる前に対策が必要です。

関連記事:アパート経営における落とし穴。デットクロスの対策について教えます。

最終的な着地点を考える

アパート経営は売却してみないと損益が確定しないと言われています。

それは売却時に多額のキャッシュを生み出す場合が多いからです。

しかしながら売却以外の戦略もありますので、それぞれ見ていきましょう。

ホールド

必ずしも全て売却が正解かというとそうでもありません。

最初にお話しした通り、アパートを購入するためには多額の諸費用が必要になります。

これらの諸費用は単なる経費ですので、払わないならそれに越したことはありません。

アパートには耐用年数がありますが、必ずしもそこで建物の寿命が終わるかというとそうでもありません。

きちんとメンテナンスすれば長期で使い続けることは十分可能です。

今後は建物もリフォームしつつ長く使い続けることがトレンドとなりますので、アパートの競争力を維持しつつ、最大限使い続けることが利益を最大化させることになるのではないかと考えています。

売却

売却することでアパート経営の利益を確定することができます。

というのも、キャッシュフローは見た目の利益でしたが、銀行に返済する元本部分については言うなれば「積立預金」のようなものです。

アパートの価値が変わらないのであれば、それはそのまま利益となります。

少なくとも土地の値段は減価しませんので、理論的には建物部分のローンを返済してしまえばあとは利益となるはずです。

しかしながらそこで考えなければならないのが売却益です。

税務上の売却益に対して「譲渡取得税」がかかってきます。

譲渡取得税は減価償却後の物件価格と売却益の差分です。

また個人所有物件の場合だと、5年以内の売却には40%もの税率となってしまいます。

(法人は事業所得と損益通算)

やはりそう考えるとアパート経営は長期的な事業の認識が必要ですね。

建て替え

建物が使えなくなった時にどうするかというと建て替えですね。

土地だけでは収益を生みませんから、なにがしかの活用方法を考えていく必要があります。

建て替えをする場合には以下の費用を考慮する必要があります。

  • 新たな建物の建設費用
  • 既存入居者の退去費用
  • 建物建設中の費用

これらを考えての資金計画が必要になります。

費用が多額になりますので、再度金融機関から融資を受けることになります。

これまでの実績と、今後の計画がしっかり練られていれば新たな融資も獲得できるのではないでしょうか。

おわりに

アパート経営は入口に高額の費用が必要となるため、回収するためには長期的な視点が必要になります。

毎年のキャッシュフローに一喜一憂するのではなく、数十年後を見据えた長期計画もしっかり立てていきましょう。

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