アパート経営を始める時にどの程度の資金が必要になるのか気になりますよね。
しかし普段馴染みのない買い物なので、どの程度の金額か想像するのも難しいというのが実際のところ。
一般的には不動産そのものの購入費に加え、諸費用が10%ほど必要と言われています。
この記事では銀行のローンを使って中古の不動産を購入する時に必要な費用をご説明します。
そして少ない資金でもアパート経営をはじめる方法についてもご紹介します。
アパート経営で必要な資金の種類
アパート経営で必要な資金は不動産そのものの費用以外にもさまざまあります。
取引の流れに沿って見ていきましょう。
売買契約時
購入する不動産を決めて、正式に契約を結ぶことを「売買契約」と言います。
この時には不動産会社の宅地建物取引士から、契約の内容とともに購入する不動産について注意する事項である「重要事項」の説明を受けます。
売買契約時には不動産の代金全てを支払うわけではなく、手付金として物件価格の10%程度を支払います。
この時に必要な費用は次のとおりです。
費用項目 | 内容 | 概算費用 |
---|---|---|
収入印紙 | 売買契約書に貼付する収入印紙です。 契約金額によって貼付する印紙の金額が変わります。 | ・1,000万円〜5,000万円の契約書だと1万円の収入印紙 ・1億円〜5億円の契約書だと6万円の収入印紙 |
手付金 | 購入代金の一部を手付金として先に支払います。 | 特に決まりはないが、購入代金の10%程度 |
決済、引き渡し時
売買契約が完了したら銀行にローンを申し込みます。
ローンの審査自体は売買契約前に済ませておき、融資可能の内諾をもらっていることが前提です。
そうしないとローンの審査が通らなかった場合に購入資金の手当がつきません。
ローンの申込書は売買契約時に記載し、早ければ1週間程度で決済が可能になります。
決済時には自己資金、ローンなどで不動産の残代金、その他の諸費用を支払います。
それとともに購入した不動産の所有権移転の手続き、抵当権の設定もおこなうことで、正式にあなたの不動産になるのです。
費用項目 | 内容 | 概算費用 |
---|---|---|
不動産購入代金 | 不動産の購入代金です。手付金を納めていればその分を差し引いた金額です。 | 購入する不動産の価格 |
仲介手数料 | 不動産業者に支払う仲介料です。 | 売買価格の3%+6万円 |
所有権移転登記 | 登記簿謄本へ登記する際にかかる税金です。 | 土地:固定資産税評価額の1,000分の15 建物:固定資産税評価額の1,000分の20 |
抵当権設定登記 | ローンの抵当権設定登記にかかる登録免許税 | 借入額の0.4% |
司法書士報酬 | 登記手続きを代行してもらう手数料。 | 物件価格にもよるが、5万円〜20万円程度 |
ローン手数料 | ローンを利用する場合に銀行に支払う手数料。 | 銀行によって異なる。経験上5万円〜30万円程度。 |
収入印紙 | 金銭消費貸借契約書に貼付する収入印紙費用。 | ・1,000万円〜5,000万円の契約書だと2万円の収入印紙 ・5千万〜1億円の契約書だと6万円の収入印紙 |
固定資産税 | 不動産に課税される地方税。毎年1月1日時点の所有者に課税される。 売買時は通例として日割りで前所有者と精算する。 | 固定資産税評価額の1.4% |
都市計画税 | 同上 | 固定資産税評価額の0.3% |
火災保険料 | 建物にかける火災保険。 | 不動産によって異なる。 10年契約とすることが多い。(地震保険は5年) |
購入後半年くらい
実は購入後半年くらいすると恐ろしい支払いがあります。
それは不動産取得税です。
この支払いのことを忘れてしまっているとキャッシュフローに重大な支障をきたし、資金繰りがつかなくなる可能性もあるので注意が必要です。
費用項目 | 内容 | 概算費用 |
---|---|---|
不動産取得税 | 不動産を取得した時に支払う税金。 | 土地:固定資産税評価額の1/2の3% 建物:固定資産税評価額の3% |
アパート経営に必要な資金(実例)
アパート経営で必要な資金は購入する不動産の規模、種類によってもかなりの差があります。
ワンルームマンションと1棟マンションでは購入額も異なりますし、差し引きされる費用などにも違いがあります。
それぞれ見ていきましょう。
ワンルームマンションの購入に必要な資金の額
ワンルームマンションの購入額は1,000万円〜3,000万円程度です。
今回の試算では1,000万円のワンルームマンションをフルローンで購入する場合で計算します。
タイミング | 費用項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|---|
売買契約時 | 収入印紙 | 1万円 | |
手付金 | 100万円 | ローン実行前なので現金で建て替える | |
決済、引渡し時 | 不動産購入代金 | 900万円 | ローンで支払う |
仲介手数料 | 36万円 | ||
所有権移転登記 | 10万円 | 固定資産税評価額:500万円 土地:建物の割合を1:9で計算 |
|
抵当権設定登記 | 4万円 | ||
司法書士報酬 | 10万円 | ||
ローン手数料 | 10万円 | ||
収入印紙 | 2万円 | ||
固定資産税(日割り) | 4万円 | 半年分と想定 | |
都市計画税(日割り) | 1万円 | 半年分と想定 | |
火災保険料 | 10万円 | 1万円/年と想定 | |
購入後半年くらい | 不動産取得税 | 15万円 | |
合計 | 103万円 | 不動産購入代金を除く |
1棟マンションの購入に必要な資金の額
1棟マンションの購入はワンルームマンションに比べるとはるかに多額の資金を必要とします。
今回の試算では1億円の1棟マンションを自己資金1割、9割はローンで購入する場合で計算します。
タイミング | 費用項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|---|
売買契約時 | 収入印紙 | 6万円 | |
手付金 | 1,000万円 | 自己資金 | |
決済、引渡し時 | 不動産購入代金 | 9,000万円 | ローンで支払う |
仲介手数料 | 306万円 | ||
所有権移転登記 | 130万円 | 固定資産税評価額:7,000万円 土地:建物の割合を2:5で計算 |
|
抵当権設定登記 | 36万円 | ||
司法書士報酬 | 15万円 | ||
ローン手数料 | 20万円 | ||
収入印紙 | 6万円 | ||
固定資産税(日割り) | 49万円 | 半年分と想定 | |
都市計画税(日割り) | 11万円 | 半年分と想定 | |
火災保険料 | 80万円 | 8万円/年と想定 | |
購入後半年くらい | 不動産取得税 | 180万円 | |
合計 | 1,839万円 | 不動産購入代金(ローン分)を除く |
少ない資金でアパート経営を始める方法
「アパート経営をはじめる」というと多額の資金が必要なイメージです。
最低でも1千万円、できれば3千万円くらい。
土地があれば建物の費用だけですが、土地・建物ともに購入となると更にハードルがあがります。
しかし少ない資金でもアパート経営をはじめる方法はあります。
ローンを使う
現金でアパートを購入すると安全性は高いのですが、収益性が低くなります。
しかし現金があったとしてもローンが使えるならば利用したほうが有利です。
ローンでどこまで購入資金をまかなえるかは次の要素で決まります。
- アパートの資産価値
- 現在の資産
- あなたの属性
アパートの資産価値は「積算評価」「収益還元評価」で求められます。
積算評価と収益還元評価の求め方についてはこちら。
売値に対して資産価値の高いアパートの場合、フルローンやオーバーローンも可能になります。
次に評価されるのが現在の資産とあなたの属性です。
現在の資産とは現金・預金、保険、株式・債券、不動産など。
借りる金額に対して十分な資産があれば多くの貸し出しが可能です。
さらに現在の給与や事業でも評価されます。
サラリーマンであれば努めている会社の規模が大きかったり、勤続年数が長かったりすると高い評価になり、多くの担保余力と同等とみなされます。
自営業者や会社経営者であれば決算書が重要です。
銀行は赤字の事業者に対して融資はしません。
黒字であることが最低条件で、それが3年以上続いてはじめて融資が可能になるのです。
仲介手数料無料の物件を取得する
不動産を取得する際に支払う仲介手数料。
物件価格に対して3%なので、結構な金額です。
しかしこの仲介手数料が無料になる物件もあります。
それは「売主直接物件」です。
不動産仲介業者を介さず元売り業者が売りに出している物件を「売主直接物件」といいます。
この物件を取得する際には仲介手数料が無料であることがほとんどです。
仲介手数料がゼロだと3%の値引きと同様なので、1,000万円の物件だと30万円、1億円の物件だと300万円の値引きと同様の効果ですよね。
さらに融資の際に有利に働くケースがあります。
融資を使って不動産を取得する場合、物件取得費用を全て融資してもらえるフルローンと、諸経費まで含めて融資してもらえるオーバーローンがあります。
オーバーローンだと少ない資金でアパート経営をはじめられますが、なかなか諸経費まで融資してくれる金融機関はありません。
しかし物件価格に仲介手数料が含まれている売主直接物件であれば、フルローンでもかなり自己資金を抑えることができます。
おトクに感じるこの物件、本当におトクなのかはしっかりキャッシュフローを計算しましょう。
売主が仲介手数料をとらない分、物件価格が割高になっていることも。
キャッシュフローを計算しつつ、割高でなければ選択の余地は十分あります。
消費税還付を受ける
不動産には消費税が含まれていることをご存知でしょうか?
不動産の価格は土地と建物の合計額ですが、建物には消費税が含まれます。
消費税は課税事業者であれば支払う必要があるものですが、非課税事業者は免除されます。
アパート経営も同様で、法人で非課税事業者であれば免除されるものなのです。
不動産を買う時には売主に消費税を支払うことになるのですが、非課税事業者であれば「還付」という手続きで消費税分が戻ってきます。
単純に計算してみましょう。
1億円の1棟マンションで、土地と建物の価格が50%ずつの比率で構成されていた場合、建物の価格は5千万円です。
その中に8%の消費税が含まれているとすると、400万円程度が消費税ということになります。
それが消費税還付を受けることで戻ってくるのです。
消費税還付を受けるためには色々な手続きが必要となるので専門の税理士に依頼しましょう。
そのような税理士を見つけられない場合、私に連絡いただければご紹介します。
敷金を継承する
アパートを借りる際、借主は賃料の1ヶ月〜2ヶ月程度を敷金として貸主へ預けます。
その敷金はアパートが売買された時には新しい貸主へ引き継がれるもの。
20部屋程度のアパートだと1部屋10万円としても200万円程度が引き継がれます。
実際には借主から「預かっている」だけのお金なのですが、退去するまではオーナーの手元資金として活用できます。
アパート経営に必要な資金まとめ
アパート経営では次の3つのタイミングで資金が必要です。
- 売買契約時
- 決済、引渡し時
- 購入後半年くらい
特に購入後半年くらいに必要になる「不動産取得税」は忘れがち。
しっかり資金計画に組み込みましょう。
これらの資金は自己資金だけではなく、ローンでも支払えます。
少ない自己資金でアパート経営をはじめるために、自分の属性や資産は徹底的に活用しましょう。
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