スマートデイズが民事再生法を適用して経営破綻しました。
スマートデイズはシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していましたが、入居率が向上せず、資金繰りに行き詰まっての結果です。
このシェアハウスへ融資していたのはほとんどがスルガ銀行でした。
スルガ銀行はなぜ不動産へ積極融資できるのか
これまでスルガ銀行は独自のビジネスモデルで不動産への融資をおこなってきていました。
- 融資の審査時間が他の銀行に比べて圧倒的に早い
- 築古アパートにも耐用年数を超えた融資期間を出す
- 収益還元評価で不動産を評価することで満額に近い融資を実行する
など、他の金融機関ではおこなっていないことを積極的におこなっていました。
その代わり4.5%の金利で融資実行し、そのリスクをテイクしていたと言えます。
表には出てきていませんが、これまでもアパートの収支が回らず、破綻していた例も多かったのではないでしょうか。それでも問題にならなかったのは「投資は自己責任」ということで、破綻した投資家も諦めて自分の給与から支払っていたからではないかと思います。
スルガ銀行としてもある程度の人数は破綻すると想定しての高金利ですので、若干の債務減免などにも応じていたのではないかと想像できます。
「かぼちゃの馬車」のビジネスモデル
スルガ銀行以外にも収益還元評価で融資額を決定する銀行はありますが、スマートデイズが売っていた「かぼちゃの馬車」に融資しているのはほぼスルガ銀行だけでした。
スマートデイズがサブリースにより賃料保証した家賃収入は、入居者からいただく家賃のみではなく、入居者に就職を斡旋することで就職先の企業より得る手数料も見込んでのものでした。
しかしスマートデイズは物件の売買益を優先するあまり、シェアハウスの需要を超えて過剰に物件を供給し、自身で入居率の悪化を招いたのです。
当初の計画どおり、個々の物件で収支が回るように管理していればこのようなことにはならず、問題があったとしても被害は最小限で食い止めることができた可能性もあります。
売上の拡大を優先するあまり需要を考えずに物件売買を進めていった結果経営破綻に至りました。
このようにシェアハウスを過剰に供給し続けると破綻することは明白でしたが、供給を止めることによっても経営破綻する可能性が高かったため、経営陣は確信犯的に供給量を増やしていったのではないかというのが今回の疑いです。
また、そのようなビジネスモデルであるがために通常の不動産への融資とは異なり、スルガ銀行以外の金融機関からは融資はおこなわれませんでした。
銀行は不動産への融資をどのように見ているのか?
銀行が事業融資をおこなうにあたっては様々な観点でチェックします。
- 売上の見通しはどうなのか
- 経費の見積もりは妥当なのか
- 経営者としての能力はあるのか
など、事業には不確定要素が多いため、なかなか融資もとおりづらいし、融資額も伸びない傾向があります。
それと比較して不動産への融資は、
- 売上のほとんどが家賃のため毎月一定額
- 経費は管理会社への管理費用、毎月の維持管理費用、定常的な修繕費用、10年に一回程度の大規模改修費用
- 運営実務は管理会社がおこなうので特別なスキルは要求されない
など不確定要素がとても少ないため銀行としてもリスクが読みやすく、融資を実行しやすいという特徴があります。
ここ最近は不動産への融資が完全に閉まってきていて新規に参入することが難しい状況です。それまでの数年間は各銀行ともに積極的に不動産へ融資してきたため、年収が低くて貯金が少ないサラリーマンでもアパート経営を始めることができました。
銀行が不動産の融資へ積極的となる要因としては、日銀の低金利政策によって銀行の利ざやがなくなってきたことと、事業融資の伸び悩みがあります。日銀の低金利政策については周知の通りですが、事業融資の伸び悩みについては銀行にビジネスモデルの転換を促してきます。
それを実行してきたスルガ銀行が今回の事件の融資元銀行であったこともあり、今後の銀行業界の動きにも注目していきたいですね。
これからアパート経営へ参入するためには
これから新規にアパート経営に参入するためには現金が必要です。
逆に、すでにアパート経営に参入している人にとっては有利に物件を取得できる条件が揃ってきたとも言えます。
これからアパート経営を始める人の選択肢としては、
- 少額の物件から始めて実績を作る。投資額は自己資金の5倍程度が目安となるが、地銀や信金から融資を引いて実績を積み上げていけば更に大きな融資を引き出せる可能性が高まります。
- 資金がない人は自己資金を作ることから始めましょう。本業を頑張って貯金を増やすこと、出費を減らすこと、副業を始めて副収入を得ること、投資によって自己資金を増やしていくことが必要です。
- 自己投資は早ければ早いほどいいです。アパート経営の一番の武器は知識なのだから。
今回のシェアハウスのトラブルについても、
- サブリース契約の不安定さを認識すること
- サブリースに関するこれまでのトラブルを調べること
- サブリースが解除された場合に自身で運営可能かを考えること
など投資判断を業者や銀行に丸投げせず、自分の知識で判断していく必要があったのではないかと思います。
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