毎年の減価償却費を算出するためには資産の償却期間と償却率を求める必要があります。
償却期間と償却率は資産の種類毎に決まっていますが、償却率には少しだけ選択の余地があります。
しかしアパート経営で減価償却費の大部分を占める建物と建物附属設備の償却率は定額法と決まっているので選択の余地はありません。
ただし車両及び運搬具は定額法と定率法のどちらかを選択することができるので、あなたの状況に応じて最適な方法を選択することができます。
この記事では減価償却費を定率法にした場合、定額法と比較してどの程度の節税効果があるのかを検証してみます。
個人と法人では減価償却費の計算方法が異なる
減価償却費の計算方法には定率法と定額法があります。
しかしどちらの計算方法を使うかは資産ごとに決められています。
また資産によっては計算方法を変更することも可能です。
減価償却費の計算方法(個人)
資産の種類 | 計算方法 | 変更可否 |
---|---|---|
建物 | 定額法 | 不可 |
建物附属設備 | 定額法 | 不可 |
車両及び運搬具 | 定額法 | 可能 |
機械及び装置 | 定額法 | 可能 |
工具、器具及び備品 | 定額法 | 可能 |
減価償却費の計算方法(法人)
資産の種類 | 計算方法 | 変更可否 |
---|---|---|
建物 | 定額法 | 不可 |
建物附属設備 | 定額法 | 不可 |
車両及び運搬具 | 定率法 | 可能 |
機械及び装置 | 定率法 | 可能 |
工具、器具及び備品 | 定率法 | 可能 |
定率法、定額法は変更できる
減価償却費の計算方法を定率法にするか、定額法にするのかはあらかじめ決まっていますが、資産によっては変更も可能です。
変更には次のような手続きが必要です。
会社設立時や開業年の場合
- 減価償却資産の償却方法の届出書(法人)
- 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書(個人)
途中で変更する場合
いずれも管轄の税務署に提出します。
ただし審査基準として
申請書が現在の償却方法を採用してから(原則として)3年を経過して提出されているか、変更しようとする償却方法によっても適正な所得の金額の計算が行われるか等を審査します。
とあります。
3年以内に変更する場合は相応の理由が必要ですし、単純に節税のために変更するというのは難しいことが予想されます。
個人が定額法を定率法に変更する理由としては「法人成りを見据えた変更」というのが一番妥当な気がします・・・。
定率法の節税効果を検証(定額法との比較)
アパート経営で資産の大部分を占める建物と建物附属設備は定額法から変更できません。
しかし車両及び運搬具の減価償却は「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出すれば定額法と定率法のどちらでも選択可能でした。
では、定率法にするとどのくらい償却金額を大きくできるのでしょうか?
300万円の新車を買った場合で考えてみた場合以下のようになります(耐用年数6年)。
- 定額法では毎年50万円で6年間の均等償却
- 定率法では初年度100万円、2年目60万円、3年目45万円、4年目〜6年目30万円の償却額
定率法では定額法に比べ、初年度で2倍程度の償却額を計上することができます。
次にキャッシュアウトで考えてみましょう。
定率法では定額法に比べて初年度は50万円の利益を圧縮することができます。
法人の場合は実効税率が35.64%であるため約18万円のキャッシュフロー改善効果が期待できることになります。
個人の場合は課税所得によっても異なりますが、900万円の課税所得があると想定した場合の実効税率が25.9%であるため、約13万円のキャッシュフロー改善となります。
2年目以降は定額法と定率法であまり差はありませんが、より早く償却額を計上したいのであれば定率法がオススメだということが分かりますね。
参考:定率法の償却額を計算する
私の車で計算した場合の記事はこちらです。
おわりに
初めの年に減価償却費を多く計上できる定率法は節税には有利です。
キャッシュフローを重視する経営では有効な手法と言えるでしょう。
反面、利益が少なくなるので決算が赤字になってしまう場合もあります。
赤字決算が続くと銀行から新たな融資の引き出しや、金利交渉には不利になることも。
適度に節税しつつ、健全に利益を計上することがアパート経営には必要です。
しかし決算書の作り方でみすみす黒字化できるチャンスを逃しているかもしれません。
そのためにもアパート経営の減価償却費をコントロールする方法で減価償却費の適正化をはかりましょう。
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