確定申告や決算で外壁塗装、屋上防水などの修繕費用を計上する際、当然経費になると考えますよね。
でもちょっと待ってください。
修繕の目的によってはその年の経費にできないこともあります。
修繕の目的で変わる経費の落とし方
リフォームや外壁塗装、屋上防水などの修繕にかかる費用は一般的に「修繕費」と言われています。
しかし決算時の勘定科目で使われる「修繕費」とは少し意味合いが異なります。
修繕にかかる費用は会計上、次の2つのものに分けられます。
- 収益的支出:当期の収益に対する支払い
- 資本的支出:資産価値を高める支払い
収益的支出は資産の現状を維持するための工事費用の支払い、
資本的支出はこれまでなかった機能や、品質の向上や使用期間を延長させるなど、価値を高める工事費用の支払い
という考え方です。
資本的支出の経費の落とし方
資本的支出と判断された場合、その年に全ての経費を計上することはできません。
いったん「固定資産」として計上し、耐用年数にしたがって毎年償却していく「減価償却費」となります。
収益的支出の経費の落とし方
収益的支出と判断された場合は、その年に全ての経費を計上します。
特に他の経費との違いはありません。
勘定科目は「修繕費」です。
資本的支出か収益的支出かの判断条件
全てその年の経費にできる収益的支出にすると税金の支払いが抑えられ、キャッシュフローも圧迫されません。
逆に資本的支出になると、その年は実際の支出よりも少ない経費しか計上できないことになります。
そのため一般的には収益的支出として処理したほうが経営的には望ましいと言えます。
国税庁で公表されている資本的支出か収益的支出かを判断する条件には大きく2つの考え方があります。
- 目的による判断:支出の目的によって判断すること
- 金額又は実施する周期による判断:支出の金額や頻度によって判断すること
目的によって判断できるのが一番良いのですが、税務署と事業者で判断が分かれることが多いのもありがちな話し。
そのような場合の線引きを容易にできるよう、金額や実施する周期による判断基準も定められています。
目的による判断
次の資本的支出の具体例は国税庁のサイトで紹介されています。
- 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
- 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
- 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
つまり、既存の機能を復旧する工事であったり、既存と同様の耐久性をもった塗料を使った場合だと修繕と認められるが、性能が向上している場合にはその部分を資本的支出とみなすということです。
これは難しい問題で、例えば塗料で考えてみると、昔と今では耐久性が向上している場合も多く、見方によっては資本的支出と言えます。
金額又は実施する周期による判断
見解の相違により税務署と事業者の意見が分かれるケースが多く見られ、そのような場合の判断基準としていくつか条件が定められています。
工事費が少額の場合や、工事の周期が短い場合の判断基準は無条件で修繕費にできます。
その条件は次のとおりです。
- その金額が20万円に満たない場合
- その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが過去の実績やその他の事情から明らかである場合
3年以内の周期でおこなわれていることを証明するものは過去の領収書です。
その工事を初めておこなう場合には一般的な事例に照らし合わせて判断されます。
上記条件を満たさず、明らかに価値を高めるもの、もしくは耐久性を増すものであれば資本的支出となります。
しかし判断に悩むものについては次の条件で考えます。
- その金額が60万円に満たない場合
- その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
上記条件を満たさない場合は実質(価値や耐久性を向上させていないか)によって判断することになります。
適切な経費計上方法はどれ?
これまで見てきたとおり、工事費が資本的支出か収益的支出かは人によって判断が分かれるところなので、税務調査で揉めることが多い項目です。
実際どのように判断したらよいのでしょうか。
修繕費の内訳を細かく分類する
資本的支出か収益的支出かは修繕の目的により判断します。
そのため修繕箇所ごとに判断できれば、よりあいまいさを少なくすることができます。
修繕箇所ごとの領収書を準備しておきましょう。
それが難しい場合は見積もり資料で判断することになるので、内訳を細かく分類しておきましょう。
税理士に相談
決算を税理士にお願いしている場合は迷わず税理士に相談することです。
税理士によって保守的に考える方や攻める方などいろいろな方がいます。
でもやはり節税を考えているのであれば攻める税理士にお願いしたいですね。
税務調査が入った時は納税額が減る指摘はないのですから、こちらが遠慮してわざわざ納税額を増やすことはしたくないですよね。
修繕費に計上してしまう
自分で決算をしている場合はこれまで見てきたような条件で判断することになります。
それでも迷う場合には自分の有利なように計上してしまうというのも一つの考え方です。
その場合の理論武装は事前にしっかり考えておきましょう。
もし指摘されて反論できないようであれば素直に認めるしかありませんが。
銀行融資を考えている場合はあえて資本的支出という判断も
税金を抑えてキャッシュフローを高めるというのは一つの選択肢です。
しかし今後も融資を受け続けるつもりであれば決算書の利益を高めることも重要です。
銀行が融資を出したいのは儲かっている企業です。
赤字の企業が融資を受けるのは非常にハードルが高くなります。
減価償却費を差し引いて考えてくれる銀行もいますが、できれば黒字の決算書で融資審査に望みたいところ。
そのようなことも考慮して資本的支出とする選択肢も検討しましょう。
まとめ
意外と知られていない修繕費の勘定科目。
資産計上しなければならないことを知らなかったり、高額であれば資産計上するしかないと考えていたり。
決算書を作る上ではポイントとなる勘定科目です。
自分の今後の戦略に合った計上方法を考えていきたいですね。
減価償却の詳しい内容についてはこちらの記事をどうぞ。
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