アパートでは様々な修繕費が必要になります。
アパートの規模によっては数百万〜数千万もの修繕費が必要になる場合もあり、計画的に準備しなければ一瞬でキャッシュが足りなくなってしまうことも。
この記事ではアパートで必要となる修繕費の種類と、それを効果的に捻出する方法をお伝えしていきます。
修繕費の種類は3つ
アパートの修繕費は大きく次の3つに分けられます。
- 大規模修繕
- 突発的な修繕
- 入退去時の修繕
それぞれ詳しく見ていきましょう。
大規模修繕
一番金額が高くなる修繕費用です。
不動産投資で修繕費用が必要と言われると、さいしょに思い浮かびますよね。
では大規模修繕とは具体的にどのようなことをやるのでしょう?
一つは屋上防水工事です。
規模の大きなアパート(RC造や重量鉄骨造など)では、容積率を多く使うために陸屋根という平たい屋根の形態をとっています。
その場合、瓦屋根と違って勾配がゆるいので雨漏りしないよう、屋上に防水処理が必須なんですね。
この防水処理はシートだったり塗膜だったりするのですが、概ね10年程度で塗り直しなどの修繕が必要になります。
もう一つは外壁工事です。
建物の外壁はタイル、サイディング、木材など。
これらも定期的な修繕が必要になります。
素材にもよりますが、10年程度で交換や補修が必要となることがほとんど。
塗装の塗替えだったり、目地の補強だったり、タイルの貼り直しだったり。
これら防水工事や外壁工事は規模が大きくなるほど修繕費用も高くなります。
相場としては6世帯、ワンルームのアパートだと百万円〜数百万円、20世帯、ファミリータイプのアパートだと数百万円〜数千万円もの修繕費になることもあります。
突発的な修繕
大規模修繕はあらかじめ施工時期を決めることができました。
しかしアパート経営をしていると思わぬトラブルが日常的に発生して、即時の修繕が必要になることがあります。
雨漏り
建物にとって水は大敵。
放っておくと躯体にダメージが蓄積されてしまいます。
しかも入居者がいる室内で発生すると即座の対応が必要になることも。
雨漏りの原因は大きく次の3つ。
- 屋上防水の劣化
- サッシの隙間のシーリング劣化
- 外壁の目地劣化
目に見えるものであれば分かりやすいのですが、水は僅かな隙間からでも入り込むので原因を特定しづらいという問題があります。
さらに建物の形によっても様々な要因が考えられます。
自分の物件の弱点がどこかを把握して修繕に備えましょう。
受水槽故障
大規模なアパートだと「受水槽」という設備が備わっています。
各部屋へ水を分配するために一時的に水を貯め、ポンプを使って押し出す装置です。
通常は公共の水道から各部屋へ直接水が送られますが、高層階になると水圧が不足して送れないためこのような設備が必要になります。
受水槽には次のような装置が備わっています。
- 水位をチェックするためのボールタップ
- 受水槽へ貯水するための定水位弁
- 水を押し出すためのポンプ
これらは全て機械式なので、一定期間が経過すると故障するリスクも高まるわけです。
受水槽の大きさにもよりますが、修繕費の目安は次のとおりです。
- ボールタップの交換は3万円〜5万円
- 定水位弁の交換は20万円〜40万円
- ポンプの交換は90万円〜150万円
消防設備故障
アパートの消防設備は次のようなものがあります。
- 消火器
- 避難用はしご
- 自動火災報知設備
消火器や避難用はしごはめったに故障することはありません。
しかし自動火災報知設備については定期的な点検が必要なのと、電子機器や機械などで構成されているので故障したときには修繕が必要になります。
しかし自動火災報知設備については設置基準が決まっているので、一定規模以上のアパートのみに備えられているものです。
アパートを購入する場合には自動火災報知設備の有無についてチェックし、もし備わっているのであれば定期的な点検費用や故障時の修繕費用を加味して購入価格を決めましょう。
点検費用の目安は年間8万円〜15万円、故障時の修繕費用は50万円〜200万円程度です。
部屋の設備故障
各部屋には次のような設備が備わっています。
- 給湯器
- エアコン
- 換気扇
- 電灯
- ウォシュレット
- 水回り(水栓、パッキン)
これらは生活をする上で必要な設備ですので、故障すると即座の修繕が求められます。
それぞれ部品代と工賃込みでの目安は次のとおりです。
- 給湯器:5万円〜15万円
- エアコン:5万円〜10万円
- 換気扇:2万円〜5万円
- 電灯:1万円
- ウォシュレット:2万円〜5万円
- 水栓交換:2万円〜4万円
- パッキン交換:1万円
入退去時の修繕
入居者が退去する場合原状回復工事をおこないますが、修繕費用は全額入居者が負担するものではありません。
経年劣化を加味して、大家と入居者で修繕費を折半します。
退去時にかかる修繕費用としては次のようなものです。
- クロスの補修・交換
- 床材の補修・交換
- 畳の表替え
- ふすま、障子の張替え
- ハウスクリーニング
どこまで修繕するかは大家の考え方によりますが、今の賃貸市場は借り手優位でもあるので、できるだけ綺麗に修繕して募集をしたほうが次の入居者も早く見つかるでしょう。
床材の選び方や修繕費用の目安についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
できる大家がやっている修繕費の圧縮
これまで見てきたようにアパートでは様々な修繕が発生します。
管理会社や業者の言うままに修繕費を払っていると、いつまでたっても手元にキャッシュが残りません。
そのため、儲かるアパート経営には様々な工夫が必要になってきます。
なじみのリフォーム業者を見つける
入居者がトラブルを発見した場合には管理会社に連絡が入ります。
漏水、設備の故障など。
安いからといってその都度自分で業者を手配していると、入居者との連絡ミスなども発生するのであまりおすすめではありません。
入居後のトラブルはできるだけ管理会社に手配してもらっています。
しかし管理会社に工事を依頼すると割高になるので、退去後の内装工事については自分のなじみのリフォーム業者にお願いしたいですね。
知り合いがいれば紹介してもらうのも手です。
いない場合は有望なリフォーム業者をとにかく探し出して会ってみることです。
リフォーム業者の探し方については次の記事で詳しく紹介しています。
小規模企業共済や全額損金にできる生命保険で積み立て
大規模修繕の費用は数百万円から数千万円になることもあり、一括で費用を捻出するのは難しいですよね。
しかし大規模修繕は計画的に実施するので、そのための費用は計画的に準備しておくことも可能です。
その際、ただ費用を積み立てるだけでなく、積み立てた金額を損金として計上できる小規模企業共済や全額損金にできる生命保険がおすすめです。
積み立てたお金を引き出す時は益金になるので、大規模修繕費用の経費と相殺することで節税効果を高めることができます。
ただし大規模修繕費用を修繕費として一括計上するにはさまざまな要件があるので注意が必要です。
火災保険の利用
突然のトラブルに有効なのが火災保険です。
火災保険は火災の時だけ使うものではなく、突発的な被害に使えることが多々あります。
破損、汚損、故障など。
既に修繕が終わっていたとしても、あとから申請することも可能です。
火災保険の活用方法については次の記事で詳しく紹介しています。
プロパンガス業者
アパートでは都市ガスよりもプロパンガスの場合が多いです。
なぜならば、アパート新築時のガス配管工事をプロパンガス業者が無償でおこなってくれるからです。
実際には無償ではなく設備を貸すという形態になるのですが、おおよそ10年間そのプロパンガス業者と契約を継続すると償却が完了するというような契約が主流です。
給湯器も同時に支給されるケースがあります。
その場合には給湯器はプロパンガス業者の持ち物となり、故障した場合の修理・交換はプロパンガス業者がおこないます。
あとは交渉次第で次のようなことも可能です。
- エアコン交換
- ウォシュレット交換
- モニターフォン交換
- ガス置き場の賃料徴収
全ては交渉次第ですが、あまりやりすぎると入居者のガス料金に反映されてしまうこともあるので注意が必要です。
また「無料で交換してもらった!ラッキー!」と思っていたら、実はプロパンガス会社の資産として計上されているだけですので、どのくらいの金額が計上されるかはしっかり確認する必要があります。
プロパンガス会社を変更する際にはその金額を変更先のプロパンガス会社が肩代わりする必要があるので、あまりに高額だとプロパンガス会社の変更ができなくなってしまいます。
また、アパート売却時にはプロパンガス会社をそのまま継承する場合が多いのですが、まれにプロパンガス会社を継承しない買主もいます。
その場合は売主がプロパンガス会社に残った資産分の金額を払って契約解除する必要があります。
ハウスクリーニング費用は事前徴収
退去後には必ずハウスクリーニングが必要になります。
これまでは敷金から差し引く形で入居者から徴収することが多かったのですが、最近は敷金ゼロ物件も増えてきました。
退去時に費用請求するのは揉める原因にもなるので、事前に償却費用としてハウスクリーニング費用を徴収しておくのは必須ですよね。
自分の労働力を投入する
業者に修繕や交換をお願いすると当然費用が発生します。
部品代はもちろんのこと、人件費や交通費など。
自分でできるものは自分でやれば、その分の費用を抑えれます。
入居中の部屋では難しいですが、空室だと少々失敗してもやり直しがききます。
最初は戸惑うことも色々ありましたが、やってみて気づきもありました。
次のようなことは自分でもやってみてはいかがでしょうか。
- ウォシュレットの交換
- モニターホンの交換
- キッチン水栓、浴室水栓、洗濯水栓の交換
- 浴室換気扇、トイレ換気扇の交換
- キッチンパネルへのシート貼り
- 電灯の交換
- 網戸の交換
- ドアクローザーの調整や交換
- 庭の整備
費用の低減と大家力の向上のためにも取り組んでみたらいいと思います。
まとめ
アパートの修繕費、あなたはどのくらい節約できているでしょうか。
とにかく色々ためしてみて、早く自分にあったやり方を見つけましょう。
あとはそれの繰り返しでひたすらキャッシュを貯め、次の物件獲得に進むのが不動産投資の王道です。
修繕費の目的によっては資産計上され、減価償却が必要なケースもあります。
適切に経費計上するためのポイントは次の記事で紹介しています。
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