アパートの減価償却資産は建物ですが、その建物は附属設備である建物附属設備と按分することができます。
建物と建物附属設備は償却年数が異なるので、より償却期間が短い建物附属設備に多く按分することで早く減価償却をおこないたいですよね。
建物の償却年数は新築の22年〜47年に対し建物附属設備は15年です。
中古物件でも償却年数が15年より多い場合は建物附属設備に償却資産額を割り振ると、減価償却費を多く取ることができます。
では建物と建物附属設備はどのように按分するのでしょうか?
建物と建物附属設備の按分方法
建物と建物附属設備の按分方法は概ね以下の3パタンとなります。
- 新築時の建築費用で建物と建物附属設備を按分
- 不動産鑑定士に依頼して建物と建物附属設備の按分比を算出してもらう
- 類似の物件から建物と建物附属設備の按分比を類推する
新築時の建築費用で按分
新築時の建設費用の見積書が入手できる場合、その費用の按分費で算出します。
主な建物附属設備は具体的には以下となります。
- 電気設備
- 防災設備
- 給排水設備
- 衛生設備
- ガス設備
- エレベーター設備
- 自動ドア設備
- 冷暖房設備
これらを見積書から抽出し、さらに既に償却している分を除いて残存資産額を算出します。
例えば1000万円のRC建物で附属設備との按分比が6:4であった場合、5年後の残存資産額は以下の計算式となります。
建物:600万円*((47-5)/47)=536万円
建物附属設備:400*((15-5)/15)=267万円
取得した価格が800万円であった場合、上記残存資産額の按分費で算出すると、建物が66%、建物附属設備が34%となりますので、建物が528万円、建物附属設備が272万円であると算出することができます。
また新築時の見積書が入手できない場合、類似の物件の見積書から算出するという方法も考えられます。
それにはある程度の合理性は認められますが、税務調査で否認される可能性は否定できません。
不動産鑑定士に依頼
不動産鑑定士に建物の評価を依頼することで、建物と建物附属設備の価値を算出してもらうという方法です。
不動産鑑定士は国家から認められている資格ですので、鑑定士が作成した鑑定書があれば税務調査で否認されることはありません。
ただし不動産鑑定士に支払う鑑定料が必要となります。
鑑定料は不動産鑑定士により異なりますが、相場としては10万円〜30万円程度ではないでしょうか。
建物と建物附属設備を分けることによりそのくらいのメリットが見出せるのであれば依頼する価値はありますが、トータルの償却額が増えるわけではないので、あまりオススメの方法ではありません。
再建築費評点数算出表から算出
過去の税務調査の事例でも、再建築費表点数算出表から算出することは「合理的である」と判断されていますので有効な方法です。
こんなのです。
では再建築費評点数算出表はどのように作成、入手するのでしょうか?
この資料は固定資産税評価額算出のために市区町村で作成されているものです。
しかし市区町村では開示の義務がないため、納税者への開示はおこなわれていません。
この資料の開示を市区町村に求めることで入手できる可能性があります。
ただし開示は義務ではないため、市区町村より拒否される可能性はあります。
どの方法も取れない場合には?
そうは言っても上記方法が取れないこともありますよね。
であればリスク覚悟で攻めるという選択肢もあります。
建物と建物附属設備は巷では7:3で按分するということも言われていますが、7:3については過去に否認された実績があります。
裁判事例はこちら。
それであれば8:2でざっくり計上し、税務調査で取り上げられないことを祈りましょう。
私の依頼している税理士に聞いたところでは、8:2の按分で税務署よりいちゃもんがついたことはないそうです。。。
あくまでも自己責任でお願いします。
銀行から融資を受けられる状態を常に維持することで、今以上に有利な借り入れや借り換えが可能となります。
そのためにはキャッシュフローと決算書の黒字化が必要です。
しかし決算書の作り方でみすみす黒字化できるチャンスを逃しているかもしれません。
そのためにもアパート経営の減価償却費をコントロールする方法で減価償却費の適正化をはかりましょう。
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