アパート経営の失敗は購入時に7割は確定すると考えていいでしょう。
それはなぜか?
アパート経営は不動産あってのものです。
不動産は「不」動産であるため、その場所から動かすことができません。
他のビジネスと異なり、買ってから変更できる要素が少ないのがアパート経営なのです。
だから安定しているとも言えるのですけどね。
そんなアパート経営に失敗しないためには、アパートを買う前が重要になってきます。
あなたがアパート経営をする目的は何でしょうか?
その目的によって成功や失敗の定義が異なってきます。
ある人は収益性を求めて
ある人は資産性を求めて
またある人は社会貢献を求めて
それぞれ考え方が異なるでしょうから、成功や失敗の定義も人それぞれです。
また、アパートを買ってしまった後の挽回は難しいのでしょうか?
それは失敗の内容にもよります。
努力で挽回できるものもあれば、一度リセットしてやり直した方が良い失敗もあります。
それではアパート経営の失敗にはどのようなパタンがあるのか見ていきましょう。
アパートの需要を見誤った失敗
アパート経営は入居者があって成り立ちます。
入居者はそのアパートに何らかのメリットを感じて住もうとしているわけで、メリットを感じてもらえる入居希望者がいれば満室経営を続けることができます。
逆に入居希望者にマッチしない物件はいつまでも入居が決まらず、空室期間が長くなりアパート経営に失敗することになります。
立地、設備
都市部と地方部では事情は異なりますが、都市部の立地で重要視されるのは駅からの距離です。
駅から近いほど入居希望者が現れる確率が高くなってきます。
また、近ければ相場よりも高い賃料で募集することも可能です。
それでは地方はどうでしょうか?
地方は車社会で、一人一台車を所有しているところも多くあります。
そのため、アパートの敷地内もしくは近所に駐車場が確保できるかが非常に重要となります。
家から出てすぐに駐車場があると理想ですよね。
アパートの周辺施設についても気にしておきましょう。
独身者向けのアパートであれば近くにコンビニがあると便利ですし、ファミリー向けの場合はスーパーなどのショッピング施設、リラックスできる公園などが近くにあると便利です。
入居ターゲットとなる層が便利に生活できるイメージが浮かぶかが重要ですね。
需要動向
マクロ的な視点となりますが、アパート周辺の需要動向も今後の客付に影響されます。
その場所で一番の物件になれば生き残ることも可能ですが、大きな需要があれば少しの努力で空室が埋まります。
ということは家賃も高めに維持することができるということです。
需要を検討する際には大きいところから見ていきます。
まずはその市町村の人口動態です。
対象となる市町村の人口が増加傾向なのか、減少傾向なのかを大まかに確認します。
今はなかなか人口が増えている場所も少ないので、大きな減少がないかを見ていくのが良いでしょう。
そしてアパートのターゲットとしている年代の人口を確認します。
人口の調査は各市町村のホームページでそれぞれ掲載されているので確認するとよいでしょう。
次に競合の状況を調べてみましょう。
競合が少なければ入居付に苦労することも少ないので、できるだけアパートの少ない地域を選びたいです。
かといって競合アパートの数を調べることはできないので、現在募集している空室の状況から予測することになります。
空室の状況確認は賃貸物件を掲載しているサイトからおこないます。
部屋探しで一番アクセスが多いのはSUUMOです
その次にLIFULL HOME’S
昔ながらの不動産屋さんが掲載していることが多いat home
これらのサイトでほぼ相場を網羅することができます。
また不動産仲介会社に直接確認することで、生の情報を収集することができます。
不動産仲介会社は自社の管理物件を増やして収益アップをおこないたいため、今後オーナーとなる可能性のあるあなたの話しであれば喜んで聞いてもらえるでしょう。
アパート不具合の見落としによる失敗
アパート自身の問題によってアパート経営に失敗するケースもあります。
建物の故障、破損、劣化
建物の不具合が発生すると何らかの対処が必要となります。
また建物が劣化していると入居付に影響するため、修繕をおこなう必要があります。
築年数が経過していくと、外装とともに内部の劣化も進んできます。
目に見える部分であれば対処も可能なのですが、配管が建物内部に埋設されている場合などは対応不可能となり、新たに別の配管を通すなどの大規模な作業が発生する可能性もあります。
アパートを買う前に全てが把握できていればいいのですが、チェックするポイントは様々です。
関連記事はこちら:大規模改修時に確認したいこと(外装部分)
内装についても確認する必要があります。
既存の入居者が退去する際、築浅の物件であれば原状回復のみで大丈夫な場合が多いですが、築古物件の場合にはリフォームが必要になることもあります。
一部屋分のリフォーム費用がどのくらい必要か
何部屋リフォームが必要になるのか
など今後必要となる費用を算出し、値引き交渉の材料にするなり、今後の事業計画に盛り込むなりしていく必要があります。
インスペクションを依頼するというのもあります。
費用は10万円程度かかりますが、買うことがほぼ決まっているのであれば網羅的に確認して、引渡し前に売主と再交渉するのもよいですね。
忌避施設が周りに存在
忌避施設とはそのアパートへの入居を難しくする周辺施設のことをいいます。
- 風俗店:品格を下げる、周りの雰囲気が悪くなる
- 公害:悪臭、騒音
- 嫌悪感:基地、刑務所、ゴミ処理場、火葬場、墓地
一般的には上記のような施設が周辺にあった場合客付が難しくなり、結果的に賃料も下がります。
それでも気にしない入居者は一定数存在するのは事実ですが、絶対数としては少ないため、家賃値下げ競争にならざるをえないでしょう。
しかも自分のアパートではない周りの施設に影響されることであるため、自身の努力でできることは限られてきます。
アパート経営の初期の頃は競争に対する体力も少ないことから、できれば避けたい物件です。
心理的瑕疵の有無
そのアパートで過去に自殺、殺人、孤独死が発生したなどの、一般的に嫌悪感をいだかれることが発生した物件は心理的瑕疵物件と言われます。
心理的瑕疵物件は入居者に告知事項として通知しなければならないことから、一般的な相場よりも賃料は下がる傾向となります。
また、心理的瑕疵を告知事項として通知しなければならない期限には明確な規定がありません。
入居者間のコミュニケーションが希薄なところであれば2〜3年もしくは、誰かが一度住んでそのあとは告知しないなどでも大丈夫なケースもあったようです。
逆にほとんど人の移動がなく、周りとのコミュニケーションが濃密なところであれば、50年前のことについても告知しなければならないようなケースもあります。
貸主の立場からすると家賃は高めにしたいので告知は控えたいところですが、入居者との裁判になるケースもあるので、できれば避けたい物件です。
アパートの価値判断見誤りによる失敗
いわゆる「高く買ってしまった」という状況です。
価値判断は目的によっても異なりますが、判断の元となる金額の出し方については事前に知っておく必要があります。
収益還元評価にもとづく価値判断
収益還元評価はアパートの収益力を元にした価値測定方法です。
収益力の基準は現在入居者からいただいている家賃収入ですが、空室の場合は想定家賃で判断します。
ここで気をつけなければいけないこととして、家賃は将来的に少しづつ下落していくものということです。
長期にわたって同じ収益を保てることは稀ですので、家賃の下落は見込んで判断する必要があります。
また、現在の入居者から受け取っている家賃についても、長期に入居している人であれば高めになっている可能性もあります。
その場合には現在の家賃相場でレントロールの引き直しをおこなう必要があります。
関連記事はこちら:アパートの適正価格を算出しよう。収益還元評価の出し方。
逆に収益力を向上させる余地がないのかも検討したいですね。
- 現在の入居者が低めの家賃だった
- なんらかの対策により家賃を向上できる(リフォーム、設備アップ、家具家電付き等)
- 自動販売機の設置
- 空き地へ駐輪場や駐車場の増設
- 屋根上に太陽光発電設備を設置
これらの対策を取ることによって収益力が向上するのであれば、購入失敗と思っていたアパートもお得な買い物であったと言えるでしょう。
積算評価にもとづく価値判断
アパートの土地、建物がどのくらいの担保価値があるのかを測定するのが積算評価です。
詳しくは下記の記事を参照してください。
関連記事はこちら:アパートの適正価格を算出しよう。積算評価の出し方
銀行は担保主義ですので、積算評価を元に融資額を決定するところが多いです。
逆にアパートの販売価格は収益還元評価を元に決定されていることが多いです。
その価格差を利用して値引き交渉をしましょう。
アパートの価格は人によって様々です。
少々安くてもすぐに売りたい人もいるし、できるだけ高く売りたい人もいます。
自分が買い手だった場合はできるだけ安く買いたいと思います。
であれば
「融資額が最大XX万円なのでこの価格にしてほしい」
とか、
「積算価格がこれくらいなので、最大でもXX万円でないと妥協できない」
とか、言うのはタダですから交渉すべきです。
それで買えなかった場合はいさぎよくあきらめて次の物件を探しましょう。
複数の銀行から評価してもらえるアパートか?
アパート経営では銀行と長期にわたって取引を続けていきます。
銀行も営利企業ですから、融資から収入を得ることを目的としています。
そのため、金利動向は借り手、貸し手双方にとって非常に関心が高いものです。
借り手からすると低く抑えて経費を抑えたい
貸し手からすると高く設定して収益をあげたい
双方の考え方が真っ向から対立しています。
そのため、どちらかが非常に有利な立場となった場合、相手側の言いなりになる可能性が高くなります。
銀行をいいなりにさせるのであればよいですが、逆の立場だったら・・・
そうならないためには競合相手を探すことです。
そう、他の銀行ですね。
そのためにはあなたのアパートが複数の銀行から評価されていなければなりません。
ある特定の銀行は評価するが、その他の銀行では評価しないとすると、結果的にその銀行のいいなりになってしまいます。
そのためにも銀行が融資する条件をしっかり見極めて、そのアパートに複数の銀行が融資するのかを確認して購入する必要があります。
関連記事はこちら:アパート融資の金融機関選びを間違うとリカバリーに苦労します
まとめ
アパート経営に失敗しない物件選びをするためには、自分の目的を明確にする必要があります。
収益性を求めるのか
資産性を求めるのか
社会貢献を求めるのか
その目的によって判断基準が異なります。
また、挽回できない失敗をしないためには立地に関することは確実に抑えておく必要があります。
不動産はその場所から動かせないので、買った瞬間に立地の条件は決まってしまいます。
逆に立地以外については諦めずに工夫して挑戦していくことで失敗を挽回することも可能です。
現在の自分がどのような状況にあるのか、何を目指しているのかを明確にしてすすめていきましょう。
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