「ワンルームマンションに投資をすると節税になる」
ワンルームマンション投資を勧める不動産業者からよく聞くフレーズです。
ほんとうに節税になるのでしょうか?
また、どのような人に節税効果があるのでしょうか?
この記事ではワンルームマンション投資で、
- 節税になる人
- 節税できる税金
をご紹介していきます。
ワンルームマンション投資で節税できる仕組み
なぜワンルームマンション投資で節税になるのでしょうか。
節税には大きく2つのパタンがあります。
- 経費を大きくして所得を圧縮する(所得税、住民税の節税)
- 資産を入れ替えて資産価値を圧縮する(相続税の節税)
それぞれ仕組みを見ていきましょう。
所得税、住民税を節税する
ワンルームマンション投資は初年度赤字になることがほとんど。
その理由は購入時の諸経費にあります。
購入時には通常の経費に加え、仲介手数料や多くの税金がかかります。
それらは物件価格の1割にも達することも。
結果、初年度の不動産所得はマイナス(赤字)になります。
赤字になると税金の支払いはありませんが、税金が戻ってくることもありません。
しかし他の所得があれば、そこから税金が戻ってくることがあるのです。
サラリーマンは給与からはすでに「所得税」と「住民税」が徴収されています。
その額は前年の所得で計算されており「年末調整」で還付される仕組み。
しかし他に所得がある場合は「確定申告」で給与所得と他の所得を「損益通算」します。
結果、給与所得から払いすぎている所得税と住民税が還付されるのです。
それは初年度だけに限りません。
他の年でも不動産所得がマイナスとなった場合は給与所得からマイナスできます。
その分所得税と住民税が還付されるので、結果的に節税になるということです。
経費で節税をする
ワンルームマンション投資では様々な経費がかかります。
- 管理費、修繕費
- 減価償却費
- 営業経費
- 雑費
など。
ワンルームマンション投資といえども不動産貸付業という事業ですので、収入を得るために使った費用は経費になります。
サラリーマンで給与収入を得ていると「収入から経費を引いて節税する」という考え方が薄くなりがち。
これまで単なる支出であった次のようなものも経費になるかを考えてみてください。
- 車の購入費用や維持費用(ガソリン代、保険代、駐車場代など)
- 事務所としての水道光熱費、家賃按分
- パソコンやノートなどの備品代
これらは不動産貸付業をおこなう上で必要となるものでしょう。
単なる費用だったものが経費になるという意味で、これまでより節税が可能になります。
相続税を節税する
持っている資産の大きさで相続税の額が決まります。
非課税枠はありますが5,000万円で20%もの税率。
対象となる資産は現金だけに限りません。
- 有価証券(株式、債券)
- 不動産
- 貴金属、宝石
など。
現金以外だと価値に見合った資産評価をし、相続税額が決まります。
有価証券は相場でやりとりされているので「時価」が分かります。
しかし不動産は相対取り引きで時価が存在しません。
ではどう資産評価をするかというと、あらかじめ決められた方法によって計算します。
その計算結果を元に「相続税評価額」が算出されるのです。
一般的に相続税評価額は市場での取引額よりも低く算出される傾向があります。
それは土地の形状であったり、建物を賃貸に提供していたりと様々な減額要因があるためです。
不動産にはそのような減額要因があるので、多額の資産がある場合は現金や有価証券で保有しておくよりも相続では有利にはたらきます。
それはワンルームマンションに関しても言えます。
現金でワンルームマンションを購入するとおおよそ資産評価は70%程度に削減されます。
さらにそのワンルームマンションを賃貸として提供した場合、評価額は50%以下になるでしょう。
結果的に相続税を大幅に節税できるのです。
ワンルームマンション投資をすると節税になる人
ワンルームマンション投資が節税になると言っても誰にでも該当するわけではありません。
どのようなかたがワンルームマンション投資で節税になるのかを見ていきましょう。
本業が儲かっていて損益通算したい
事業収入や給与収入が多くあるとワンルームマンション投資で節税できます。
理由は「損益通算」です。
ワンルームマンション投資は買った年に大きく経費が発生します。
その経費は不動産賃貸業の収入で相殺するものですが、相殺しきれなかったマイナス分は他の収入からもマイナスできます。
本来、本業が儲かって多くの利益が出る場合には所得税や住民税、もしくは法人税の支払いが発生します。
しかし不動産を購入してその分の利益を圧縮できれば税金の支払いも少なくできます。
逆に本業が損している時には不動産を売却し、売却益を損益通算することも可能です。
税金の支払いを先送りし、その分を運用して利益を大きくするのです。
相続税を下げるために資産を圧縮したい
不動産投資最大のメリットは「安定した収入源」と「節税」です。
なかでも相続税の節税を目的に不動産投資する人は多くいます。
そんな中、ワンルームマンションで相続税を節税したほうがいい人はどのような人でしょうか。
不動産で相続するメリットは、現金や有価証券よりも低く評価されるので、相続税が抑えられるというものでした。
しかし相続人が複数いる場合、1棟アパートやマンションだと現物で資産を分配できず、売却して現金を分配しなければなりません。
そうなると不動産譲渡税などの税金が発生してしまいます。
それを避けるためには小さなロットで複数の不動産を持つことです。
おすすめなのがワンルームマンション。
1部屋500万円から2,000万円くらいまでほどほどの大きさです。
相続人が複数いた場合はそれぞれ現物で引き継ぐことで換金の必要がありません。
複数の相続人がいる場合の資産防衛におすすめの方法です。
節税目的でのワンルームマンション投資には注意
ここまで様々な節税効果が期待できる方法を紹介してきました。
しかし節税目的でワンルームマンション投資をするときに注意しなければいけないポイントもあります。
「赤字になるので節税できる」では本末転倒
勘違いをしている人が多いのですが、節税効果があるからと言って赤字になってしまう物件を購入するのでは意味がありません。
赤字になってもいいのは初期費用がかかる初年度のみです。
そして赤字にも2とおりの意味があります。
- キャッシュフローの赤字
- 会計上の赤字
キャッシュフローの赤字は「家賃収入 – (借入金返済 + 経費)」がマイナスになるということです。
赤字になってしまうと家賃収入から借入金の返済ができないので、他の収入から補填しなければなりません。
会計上の赤字は「家賃収入 – (経費 + 借入金利息 + 減価償却費)」がマイナスになるということです。
経費や借入金利息はキャッシュアウトをともなう出費ですが、減価償却費はキャッシュアウトが伴いません。
つまり減価償却費を多くとって会計上赤字になるのであれば問題なく、キャッシュフローが赤字になるのが問題だといえます。
キャッシュフローが赤字だと他の収入から補填が必要になるので、収入を得るためにお金を払わなければいけないという本末転倒なことになってしまいます。
投資といえども事業であることには変わりない
ワンルームマンション投資は入居者がいる限り安定的に家賃収入がはいるので、サラリーマンが副業でも十分にやっていけます。
さらに本業以外で色々な経験することで知識も増え、収入も増え、自分の成長につながります。
しかしサラリーマンの副業といえども立派な事業です。
退去者がいれば再募集も必要ですし、部屋の修繕も発生します。
それらは管理会社が手配はしてくれますが、今以上によくなることはありません。
管理会社に任せきりにせず、自分でも考えてみてはどうでしょうか。
物件の競争力があがり、入居率アップにつながる施策の検討。
うまくいけば事業としての醍醐味を味わうことができるでしょう。
売却する時の譲渡取得税に注意
ワンルームマンションを買えば減価償却費で節税できるのは事実。
現金を持っているだけでは何も費用に計上できませんが、その現金でワンルームマンションを買うと年々価値が下がる分を費用にできるからです。
しかしこの減価償却費。
ワンルームマンションを売却する時には逆に作用してしまいます。
それは「譲渡所得税」です。
この税金は「売却額 – 資産額」で課税されます。
資産額は減価償却費を使うと徐々に下がるので、長期間保有していると資産額が小さくなります。
そうなると譲渡所得税として課税される金額が大きくなってしまいます。
減価償却費で毎年節税したものが、ワンルームマンションを売却した時点で譲渡所得税として一気に課税されるのです。
結果として差し引きゼロとなるのであまり意味がないように感じますよね。
しかしワンルームマンションを売却するまでは税金の支払いが先送りできるので、その間は節税になります。
ワンルームマンション売却時、さらに税金の支払いを先送りするには、
- 新たな節税対象を見つける
- 何かの大きな費用とぶつける
などの対策が必要になります。
まとめ
ワンルームマンション投資の節税効果、勘違いしていませんでしたか?
- 相続税を節税するには最適な方法
- 不動産貸付業としての事業経費が計上できるようになる
- 所得税、住民税の節税にはなるが、売却時には逆に譲渡所得税が高くなる
ワンルームマンション業者が言う「赤字で節税になる」は本当ですが、売却時には逆に譲渡所得税が高くなるので節税ではなく、税金の先送りが正しい認識です。
しかし相続税の節税には有効ですので、ワンルームマンション投資も事業だという認識を持って取り組めば失敗することは少ないでしょう。
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